2015年4月16日に病態検査学講座の主任教授に着任いたしました蔦 幸治と申します。 私は、学生時代から病理医になろうと考えておりましたが、臨床に強い病理医になるべく大学を卒業後、 すぐに病理の医局には属さずに聖路加国際病院で内科系のスーパーローテーション研修を開始しました。
研修終了後、縁あって間質性肺炎の病理診断の大家である斎木茂樹先生に勧められ、聖路加国際病院の病理部にて一年間修行することが出来ました。 ここでの経験が私の病理医人生に大きく影響を与え、病理学は基礎研究分野ではなく臨床科の一つであると強く意識するようになりました。 母校に戻り大学院では発癌物質によるラットの副腎出血機序を解明しましたが、病理診断学を学びたいとの思いから、 国立がんセンター東病院の病理科にチーフレジデントして入職、その後、スタッフとして国立がん研究センター中央病院病理科にて11年間、おもに肺・縦隔腫瘍の病理診断に従事しておりました。 その間に1年間テキサスのM.D アンダーソンがんセンターのDr. Moranのラボへ留学することが出来ました。
がんセンターに在籍していた時代は分子標的薬の効果とEGFR変異が結びついたエポックメーキングな時代で、 その後、ALK転座を有する肺癌が明らかとなり、我々のグループもRET転座肺癌を同定し、その内容がネイチャー・メディシン誌に掲載されました。 このように、病理診断が、良・悪の診断のみでなく治療法決定に重要となる時代に様々な経験することが出来ました。
このたび、3附属病院の病理診断部門を統括するために母校に戻って参りましたが、迅速かつ正確な診断を行う体制を整えていきたく思っております。 正確な病理診断には作業手順の遵守が重要であるので、検体の固定方法、染色手技などの精度管理も重要な業務の一つであると考えております。 皆様方には、より一層のご支援ご指導を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
本講座は臨床系講座として、各附属病院の病理診断科・病理部・臨床検査医学科・臨床検査部を統括しています。
いずれも病院の診療部門に属し、患者さんの様々な検体を検索することで、治療方針の決定に関わる重要な情報を提供しており、あらゆる臨床現場で活用される、現代の医療に欠かせない重要な分野です。
病理診断科・病理部では病院における組織診断(生検・手術)、術中迅速診断、細胞診断を担っており、生検や手術検体、細胞検体から組織標本を作成して、主に顕微鏡を用いて観察し、病気の種類や腫瘍の有無・進展範囲などを決定します。これらの診断結果は主治医に報告され、治療方針の決定に役立てられます。また患者さんが不幸にして亡くなられた場合、第1病理学・第2病理学講座と協力して病理解剖を施行し、全例CPC(臨床病理カンファレンス)にかけて死因の究明やこれまでの診療の検証を行い、その結果は今後の医療や医学教育に役立てられます。病理医は患者さんに直接接する機会はほとんどありませんが、医療チームの一員として、最適な診療を行うべく、標本の向こうの患者さんに接している気持ちで診断業務にあたっています。
臨床検査科の医師の指導の下、熟練した臨床検査技師が検体検査(血液・尿・便・胸腹水・髄液など)および生理機能検査(超音波検査・心電図検査・呼吸機能検査・脳波検査など)を行っております。検査の実施だけでなく、検査結果の詳細な解釈、検査の精度管理、感染防止活動なども行い、検査結果を精確・迅速に提供できるよう努めています。
本教室は病理診断を専ら専門とする病理医を育成することを目標としております。従来、「治療方針の決定に関与する」という意味で、病理医は「ドクター・オブ・ドクターズ(医師の中の医師)」と称されておりました。しかし、今や遺伝子診断・内視鏡診断・放射線画像診断などの各種診断技術は目ざましい発展を遂げつつあります。病理診断が確定診断に重要な役割を担っていることは言うまでもありませんが、より精確な病気の診断・治療のためには、主治医・放射線画像診断医・病理診断医・腫瘍内科医など多彩な職種間の協力が必要とされます。現在の病理診断医には、診断に関する知識と経験のみならず、他者と円滑に仕事を行うためのコミュニケーション能力も要求されます。本教室は、『医療チームの一員』として、エビデンスと経験にもとづいた病理診断学的見地から治療方針の決定に関与することにより、患者さんにより近いスタンスで活躍できる病理医を育成していきたいと考えています。
本教室の研修プログラムは、病理専門医資格を得ることだけが最終目標ではなく、医療現場において長く病理専門医を続けていく為に日々自己研鑽できる病理医を養成することを目指しています。 本プログラムでは、病理診断に専念するために、研修期間中における大学院の進学は原則認めておりません。病理学には、直接的に臨床現場に貢献する病理診断学と、病態を解明する基礎医学という二本の柱があり、医療の発展においていずれも重要な分野であることは間違いありませんが、どちらも一朝一夕で身に付くものではなく、それぞれに専念する必要があると我々は考えます。 ときに治療方針を左右する可能性のある病理診断を責任を持って行うため、経験すべきことは多岐にわたりますが、病理専門医資格をとるまでの研修期間は3年と短く、資格をとってはじめてスタートラインに立てるといっても過言ではありません。日々真摯な気持ちで病理診断に励むことのできる方をお待ちしております。
氏名 | 所属 | 専門分野 | 認定資格 |
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蔦 幸治 教授 | 附属病院 | 病理診断学 臨床検査医学 |
病理専門医 細胞診専門医 臨床検査管理医 |
植村 芳子 診療教授 | 附属病院 | 病理診断学 | 病理専門医 細胞診専門医 |
稲葉 真由美 病院准教授 | 総合医療センター | 病理診断学 臨床検査医学 |
病理専門医 細胞診専門医 臨床検査管理医 |
田代 敬 講師 | 附属病院 | 病理診断学 | 病理専門医 細胞診専門医 |
石田 光明 講師 | 附属病院 | 病理診断学 臨床検査医学 |
病理専門医 細胞診専門医 臨床検査管理医 ICD(infectious control docter) |
保坂 直樹 講師 | 総合医療センター | 病理診断学 | 病理専門医 細胞診専門医 |
桝田 緑 講師 | 附属病院 | 臨床免疫学 | 臨床検査技師 薬剤師 薬学博士 |
吉賀 正亨 病院講師 | 附属病院 | 臨床検査医学 循環器内科学 |
臨床検査専門医 循環器専門医 総合内科専門医、認定内科医 高血圧専門医 |
大江 知里 助教 | 附属病院 | 病理診断学 | 病理専門医 細胞診専門医 |
宮坂 知佳 助教 | 附属病院 | 病理診断学 | 病理専門医 細胞診専門医 |
中野 麗香 助教 | 附属病院 | 病理診断学 | 病理専門医 細胞診専門医 |
宮田 奈央子 病院助教 | 附属病院 | 病理診断学 | 外科専門医 呼吸器外科専門医 |